世界の中にある孤独と孤高、自己同定と自信――ライブツアー『DRESSING!』について



宮野真守さんの2024-2025ライブツアー、DRESSINGを終えての感想、思ったこと。 

2025年6月8日(日)、宮野真守さんが古株の劇団ひまわりを退所、翌6月9日(月)、新たに研音に所属することが発表された。この大きな決断と未来への視野の広がりに、DRESSINGというツアーで感じていたことを思い出し、書きかけのまま放置してしまっていたが公開してみることにする。ちょくちょく直したり追加したりするかもしれないし、そのままかもしれない。ではどうぞ。

舞台裏に見た、あの熱

私は宮野真守さんのライブの中でも2015年ツアー、AMAZING!を心に刻んでその影を追い続けているおたくである。なぜこんなにAMAZINGに入れ込んでいるのかというと、最初の映像のせいだ。ステージ裏に立ち、鼓動がうるさく音が遠のく中で、震える手を強く握りしめて、伏せていた瞼を上げてもう片方の手で紗幕を掴み、一気に下ろす。あの姿に、エンターテインメントへの高揚とおそれと祈りのような気持ちをないまぜに覚えて、強烈に思い入れている。もちろん全編大好きなのだけど!

そんなところ今回のDRESSING!、最初の映像は、ランウェイに出る前に仲間に微笑んでまっすぐに前を見る宮野さんの横顔が写っていて、10年前のあれからなにかを手に入れたのだと思った。

世界の中に、宮野真守としてあるということ

幕間映像中にYOKO FUCHIGAMI御大が仰っていた「どんな服をまとったとしても自信があればそれがオシャレ」と言う話は、あのシーンとしてはふざけてるのだが、この話においては芯を食っていると思っている。

最初の黒衣装を着ているパートで披露されたのは、dressingに続いてBlack or White、そしてMagicだった。これは、様々な選択肢がある中での惑い、その上での「掴み取る」ことがキーワードだったからだと思う。
続けて毛皮のコートのパートでは、身体を見せながら、いうなれば「すべてを受容・肯定する」といったようなニュアンスがあったように思える。カオスの中で、取捨選択をするというだけでなく、すべて吞み込める、という意味合いだ。これには、宮野さんはいま混沌ともした世界の中にあることを受け入れてその中での自己がどこにいるのか、どこからが自己でどこからがそれ以外か、が確立して(自己同定)、自信を改めて持った状態にある、のかなと思った。
結構悟った感じというか大局的になっているというか……なかなかまとまらないのだが、ツアー全体の客席への反応を見ていて、捉え方がよりミクロに、ペンライトの群れを「光の海」「地上の星々」と総称するところから、光のひとつひとつを通して私たちを個々につまむような仕草で愛でるように思った。SINGING!の時からあった流れではあるのだけど、明確にファンという集合体というよりは個々を捉えていくモードの印象だ。

そう、AUTHENTICAの歌詞にあった言葉を引用すると、「ぼくらはひとり」なのだ。宮野さん自身もそうやって、外との境界線が明確になって、「ひとり」であることを自覚して孤独に、未踏のジャンルを切り開いてきて孤高にもなったけど、それはどこだって一層信頼できる自己を同定することにもなって、あらたな自信を獲得したのではないか。

ここ数年、宮野さんには、ちょっとビジネスちっくでアレな表現だが“視座が上がっていく”ような変化を見受けていて、もしかするとそれがひと段落したのかもしれない。TRANSFORMとか繭とかの楽曲も、清濁飲み込んでこれから新しいステージに変化・羽化していく区切り、みたいな意味がありそう。
こういうことを考えていると、千秋楽カノンで「地上の星 彼方の夢」が感慨深かった。あと同時に、ハガレンの「一は全 全は一」も思い出したのだった。

以降、各曲をつらつら

DRESSING

  • この曲で静かに始まるの、かなり良かったと思う。最初に爆発的に開ける始まり方がこれまでのライブでは多かったと思うんだけど、今回は静かの海の中にミニマルに鋭く刺す始まり方だった。BLAZING!とかも近いが、よりクールで鋭利。開幕でその高揚感、開放感に頼らずこの演出ができる自信・凄みを持ち合わせているのが、このツアーで伝えたいいまの宮野さんなんだと思う。
  • はじめのこの衣装が本当に好き。革手袋ありがたい、おたくの命が助かる。上着の後ろの背中側のスリットというか布の折り方みたいなものがすごく綺麗で、ダンスでの捌き方含め裾が美しくて惚れ惚れした。身を屈めるような仕草がこの曲にはあるんだけど、そこの体幹とかもすごいなと……これから裸の上にまとっていくから、何もなさとして黒いのかなと思った。無音、宇宙、深海、淵の底。掴んでそこに、刺していく。

BLACK OR WHITE

  • この曲覚えとったんかワレシリーズ。生バンドだと音源より揺らぎによる余裕とか静かな感じが少しあって前の曲からの接続がすごく良かった。
  • ここからは素肌の自分に、何を纏いたいのか選び取っていくパート。欲する、満たされない欲を叶えさせてしまいたい、の歌。色気というのは身体的な部分も含めた差異や余裕、無言、空間といった“間合い”に生じると思っているんだけど、今回のセトリや演出は裸=素のままから纏っていくことを起点にしているからか、この“間合い”を感じることがとてもあって(この後脱ぐとか脱がないとかではなく)、上品でセクシーに思え、そういう点でもよかった。そこに合うな〜この曲。去年、宮野さんよくわからんけどよい歳の取り方をしているな、と何回か思ったんだけど、このあたりで納得した。

Magic

  • この曲も欲しがる曲だ。大好きだ〜絶対生ドラムがいいよ。支配的で。
  • アウトロのフェイクでこれまで聞かなかったようなやり方してて、音楽と仲良くしてるな〜と思った。

Quiet explosion

  • この曲は前からライブでパフォーマンスする時は動き少なめに、鋭い目を向けたり舌を出したりもする、これまでにない表現をしている。SINGING!のときよりは動きが増えて熱量を感じたが、ここで前曲までで見せていた欲というのが、手にしていたはずのものでそれを「取り戻したい」ことも含むことに気づく。
  • これまで考えてなかったんだけど、私はSugar,Sugarの「夜の向こうへ」のとこの歌い方がとってもすきなところ、あの曲は一緒に行けたら……程度だったのがこの曲は力強く君を連れていくよ、になっている。同じ言葉でも全然違くてどきどきするね。
  • ベースがピック弾きの骨っぽい音で治安悪くて、コレコレェ!となった。大阪では幸運にも結構前の方の下手座席だったのだが、アウトロ終えて片頬を上げただーまえに微笑まれた気がして静かに爆発した。

BODY ROCK

  • 記憶ない^_^最初見たとき意味わかんなくて笑っちゃった。ジャンプ力すごい。腹斜筋?がすごい。
  • というか今回のツアー、見えやすく鍛え上げられた身体の話に行きがちなのだが、歌のうまさの安定感は過去随一だったのでは。バケモノか?と話していたら同行者が「腹筋背筋が強化されて呼吸や喉の扱いに安定感増したのでは」とご意見くださりガッテン!した。こねくり回し好きオタクが持つべきは賢い友!
  • このもふもふになる前の映像の中のお衣装が本当に素敵で、ブルーグリーンのセットアップと、大きなシルエットの刺繍のコートかな?特に後者がすごく似合ってて、服も美しくみえるし、みやのさんもなんて美しい身体なんだと感動した。あれ着てるのも生で見てみたかったなぁ。

TRANSFORM

  • trust meで引き込んで、invincible loveとokey.で優しく安心させて、からの「嘘ぴょん♡」って感じでtransformに行く流れ、絶対一生逃れられないから最高。

会場替わり曲

覚えとったんかワレ曲のみなさん
    • Forever Lullaby
    • 会いに行くよ
    • 未来

Sing a song together

  • 紡ぐ音のひとつひとつがで指先でひとつひとつつまむような仕草をしていて、可愛がってくれてるなーって改めて思うなど。

新曲:繭

  • 新曲でーすとか言ってくれ。あまりにもMCとかでも何も言わないのでえっ私が知らないだけなに怖い😿😿😿ってなった。

DISCOTHEQUE09

  • 靴音ではじまるのかっこよすぎるほんとに。繭のとこからの衣装は禍とか混沌みたいなもので、流れとしても清濁飲み込んでの再生がそこから始まるので、この曲背景画像が泥中の蓮なのほぁ~となった。

Evolve

  • これもかなりアレンジ好きだった。かなり振り絞って歌っていて、好き。

DREAM FIGHTER

    • この曲も覚えとったんかワレかと思ったけど、ウルトラ10周年だった!千秋楽ゼロとベリアル来てくれて嬉しかったねぇ。

GOLDEN NIGHT

  • NODO FUCHIGAMIでわちゃわちゃした。ガチで聞きたかった気もするけどまもるくんが楽しいならいいよ。
  • BODY ROCKでI'm just here for youと言ってくれたひとに、この曲でjust only youと叫べるのが、みやのさんとオタクの愛の確かめあいしかなくてmixingのときめっちゃ嬉しかったので、この2つが一緒にセトリ入りしてるのほんと〜〜〜に嬉しかったです!!! 

おわりに

以上 ステージングの良さもそうだけどセトリから伺える、自信をもって新たなものを見せる、というモードが嬉しいツアーだった。行けるはずだったドーム、まだ全然忘れてないよ。一緒に行きたい、絶対にもっとはるか彼方まで行こうね。

(了)

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